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2023年08月31日(木)

[診療報酬] 2024年度診療報酬改定(2) 急性期充実体制加算への移行で小児・周産期医療などに「縮小」見られず

中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会(令和5年度第3回 7/6)、中央社会保険医療協議会 総会(第549回 7/12)《厚生労働省》《厚生労働省》
発信元:厚生政策情報センター   カテゴリ: 2024年度改定 Scope 特集

 2024年度診療報酬改定に向け、中医協の入院・外来医療の分科会では、「地域包括ケア病棟」の役割の強化・充実に焦点を当てた議論が始まっている。一方、総会では「在宅医療」の検討が始まり、今後、質と量の十分な確保を念頭に置いた議論が進められていく。
 
 
◆9割が総合入院体制加算から移行
 
 中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、分科会)は7月6日の会合で、まず「急性期入院医療」を議題に取り上げた。前回会合で22年度調査の結果(速報)が報告された際、「総合入院体制加算」から22年度改定で新設された「急性期充実体制加算」への移行により、地域で小児・周産期、精神科医療が縮小するのではないかとの懸念が委員にあったことを受け、厚生労働省は関連するデータを示した。
 
 それによると、22年9月時点で急性期一般入院料1を届け出ている全国1,506病院のうち、165病院(許可病床数200床以上)が急性期充実体制加算の届出を行っていたが、その約9割(150施設)が総合入院体制加算からの移行だった。ただし、それらの病院では、総合入院体制加算を届け出ていなかった病院(約1割)に比べて、小児・周産期、精神科医療の診療実績を有する割合が高かった(参照)。また、その移行病院や総合入院体制加算を算定する病院など急性期病院全体を時系列で見ても、小児・周産期、精神科医療の診療実績に大きな変化はなかった。
 
 現状では、懸念される「縮小」は起きていないとみられるが、厚労省のヒアリングでは、「総合入院体制加算2の届出病院で同加算1を目指し、要件となる精神科病床の準備を検討していたところ、急性期充実体制加算が新設されたため、精神科病床を持たない決断をし、急性期充実体制加算を届け出た」という事例もあり、今後の状況を注視していく必要がある。
 
 一方で、急性期充実体制加算の取得状況には都道府県ごとにばらつきが見られた(参照)。そのため、委員からは「総合入院体制加算も含めた分布」や「人口当たりの届出病院数」なども確認する必要があるとの指摘が出ている。
 
 
◆地ケア直接入棟は誤嚥性肺炎が多く
 
 7月6日の分科会では、続いて「地域包括ケア病棟」を議題とし、厚労省が入棟患者像を示す22年度調査の詳細データを報告した。地域包括ケア病棟に入棟した患者の入棟経路を見ると、救急搬送により入院した患者は全体の19.5%で、そのうち救急搬送後、他の病棟を経由せずに直接入棟した患者は5.7%となっていた(参照)。入棟経路を医療機関の病床数ごとに比較すると、直接入棟患者の割合は「400床以上」(10.8%)で最も高く、「200床未満」(5.6%)と「200床以上400床未満」(5.4%)は同程度だった(参照)
 
 救急搬送後、直接入棟した患者には、(1)傷病名は誤嚥性肺炎や尿路感染症が多い(2)要介護度が高い(3)医療的な状態が不安定(4)医師による診察の頻度・必要性が高い(5)看護師による直接の看護提供の頻度・必要性が高い(6)リハビリ実施頻度、リハビリ実施単位数は低い(参照)-などの特徴が見られている<page62>。このうち、(6)に関して、厚労省は「急性期病棟に入院した誤嚥性肺炎患者に対し、1日2単位以上の早期リハビリを実施することで、死亡率の改善、自宅退院割合の向上、在院日数の短縮につながる」との研究結果を紹介。(1)(6)を踏まえ委員からは、▽直接入棟患者にも早期からの適切なリハビリ実施を促進すべき▽1日3単位以上のリハビリを別に評価すべき-などの声が上がった。
 
 (1)(2)からは、24年度改定の重要な視点の一つに挙がる「今後増加する高齢者救急をどこで受けるか」を考えた場合、地域包括ケア病棟の役割を強化する方向性も見えてくる。上記の早期リハビリ実施の課題とも合わせ、今後の重要な論点になりそうだ。
 
 
◆訪問診療や往診の算定回数に地域差
 
 中医協・総会で始まった「在宅医療」の議論では、「質の高い訪問診療・往診等を十分な量提供する」観点からの評価のあり方が論点の一つになっている。7月12日に開催された総会に厚労省が示したデータによると、「在宅患者訪問診療料」や「往診料」などの算定回数は増加しているが、都道府県別に見ると、在宅患者訪問診療料の人口1,000人当たり算定回数には最大3.5倍の差があり、往診料の算定回数では増加している都県とそうでない道府県が存在する(参照)。現状、夜間往診加算・深夜往診加算・休日往診加算の算定回数合計は福島が突出して多く、東京や神奈川など一部で増加するなど、地域によってばらつきがある。厚労省からは、福島県で算定回数が特に多い理由は特定できていないものの、「深夜や夜間など時間外の往診を積極的に受け付ける医療機関が増加していることを把握している」と説明があった。
 
 こうした現状を受け、支払側委員が地域差の要因を分析するよう求める一方、診療側委員は都市部と地方、在宅専門の医療機関と一般医療機関とでは効率性が全く異なる点に留意を求めた。在宅医療を提供する医療機関には、▽「かかりつけ医」が訪問診療を行う通常のケース▽在宅医療を専門に行う診療所▽在宅医療を専門に行う大規模なグループ-の3つの形態があるとし、一律に論じ評価することは困難だと主張。地域の実情に応じて、それらが補完し合うような体制の構築とそれを支えるための評価が必要としている。
 
 このほか、訪問看護については、訪問看護ステーションの約9割が「24時間対応体制加算」を届け出ており、その多くが24時間365日、オンコールや緊急訪問に対応していることが分かった(参照)。しかし、ステーション自体の大規模化は進んでいるものの、現場からは看護職員の精神的・身体的負担が大きいとの声が上がっている(参照)
 
 訪問栄養食事指導では、ほとんどが介護保険による「居宅療養管理指導」の算定であり、「在宅患者訪問栄養食事指導料」(医療保険)の算定回数は年々増加しているものの、極めて低調な状況にある(参照)。管理栄養士の確保が算定上のネックになっているため、委員からは地域の栄養ケア・ステーションと医療機関・訪問看護ステーションとの連携強化を図るべきとの意見が出ている。

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