[改定速報] 一般病院の損益率▲4.2%、過去3番目に低い数字 医療経済実調
今回のポイント
●厚生労働省が11月8日の中央社会保険医療協議会・調査実施小委員会と総会に報告した「第21回医療経済実態調査」によると、2016年度の1施設当たりの損益率は、一般病院全体が▲4.2%(前年度比0.5ポイント減)、うち医療法人立病院は1.8%(0.3ポイント減)で、「過去の調査と比べると下から3番目の数字」(厚労省)○医業収益は前年度比プラスで推移したが、それを上回る勢いで医業・介護費用が伸びたことが響いた。とくに給与費の伸びが大きい
○一般診療所のうち有床診療所の損益率は前年度比0.5ポイントの減少。無床診療所は0.1ポイント減少し、ほぼ横ばいで推移
厚生労働省は11月8日の中央社会保険医療協議会・調査実施小委員会と総会に、「第21回医療経済実態調査」の結果を報告した。2016年度の1施設当たりの損益率は、一般病院全体が▲4.2%で、2015年度の▲3.7%から0.5ポイント悪化。うち医療法人立病院は1.8%、前年度比で0.3ポイント低下し、「過去の調査と比べると下から3番目の数字」(厚労省)。医業収益は前年度比プラスで推移したが、それを上回る勢いで医業・介護費用が伸びたことが響いた。とくに給与費の伸びが大きい。一般診療所のうち有床診療所の損益率は前年度比0.5ポイントの減少。無床診療所は0.1ポイント減で、ほぼ横ばいだった。
有効回答数は病院1,450施設(回答率56.2%)、一般診療所1,744施設(54.2%)、歯科診療所654施設(57.2%)、保険薬局1,090施設(59.4%)。これら施設について、前回診療報酬改定を挟んだ2015年度と2016年度の2事業年度の損益状況を調べた(参照)。
◆病院の損益率は経営主体を問わず、軒並み悪化
1施設当たりの損益状況で、一般病院全体の2016年度の医業収益は37億3,481.8万円(伸び率0.4%)、介護収益は441.1万円(1.3%)となった。これに対して医療・介護費用は38億9,629.6万円(0.8%)で、収益以上の伸びを示したため、損益差額は1億5,706.7万円の赤字となり、損益率は前年度の▲3.7%から▲4.2%と、さらに0.5ポイント悪化した(参照)。医療・介護費用のなかでは、給与費が2.1%の高い伸びを示した(参照)。経営主体別でみた損益率も、医療法人1.8%(前年度比0.3ポイント減)、国立▲1.9%(0.6ポイント減)、公立▲13.7%(0.9ポイント減)と軒並み悪化。精神科病院は前年度の0.2%から▲1.1%と、赤字に転落した(参照)。
一般診療所全体の損益状況は、医業収益1億2,537.9万円(伸び率0.2%)、介護収益279.2万円(2.1%)、医業・介護費用1億1,049.1万円(0.5%)で、損益差額は1,767.9万円。損益率は前年度の14.0%に対して13.8%と横ばいで推移した(参照)。病床有無別の損益率は、有床診療所8.2%(前年度比0.5ポイント減)、無床診療所14.8%(0.1ポイント減)(参照)。保険薬局の損益率は、薬局全体7.8%(0.6ポイント減)、個人薬局10.2%(0.4ポイント増)、法人薬局7.7%(0.6ポイント減)となった(参照)。
一般病院の職種別常勤職員1人平均給料年額等(賞与を含む)をみると、医療法人立は、病院長3,160.9万円(伸び率0.6%)、医師1,516.6万円(0.2%)、薬剤師509.5万円(0.1%)、看護職員455.2万円(0.3%)など。公立病院では薬剤師を除く、病院長、医師、看護職員などで平均給料年額が伸びたが、国立病院は全職種で減少した(参照)。個人立の一般診療所は、医師1,149.8万円(▲0.8%)、薬剤師729.9万円(▲0.3%)、看護職員352.5万円(1.9%)などとなっている(参照)。
◆医療機関の消費税負担に関する分科会の早期再開を要請する声も
この日の調査実施小委、総会の議論は突っ込んだ内容にはならなかったが、猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は実調の結果について、「いかに病院経営が悪化しているかが明らかになった。国公立は経営の悪化を繰入金で補い、民間は経営を続けるのが厳しい状況にまで悪化している」との見解を表明。今村聡委員(日本医師会副会長)は医薬品や医療材料の購入に伴う消費税負担が経営悪化の一因になっているとして、「診療報酬調査専門組織・医療機関等における消費税負担に関する分科会」の早急な再開などを要請した。
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